Silvia

story


もういいかい?

「なあ相棒、夏休みもそろそろ終わりだってのに結局市民プールすらも行けなかったな」
「結構立て込んでたからな」
「けどよ、女子の水着見ねえと、夏終われねえよなあ」
「まあ、確かに」
「先輩達も好きッスねえ」
「男だからな」

 ”ジュネスのフードコートに集合”と鳴上が招集を掛けたのは1時間半ほど前だった。しかし、個々の予定があるのか、集まったのは鳴上・花村・完二だけであった。人数も集まらないのではテレビの中へ探索に行く事もできない、とリーダーの一言によりフードコートで作戦会議と言う名の雑談になったのである。
花村は暑い中、向こう側が歪んで見えるほど熱せられた鉄板を前にアルバイトをするクマを尻目に”ジュネス真夏の特売祭り”と書かれた団扇を仰いだ。


「そりゃ、こうも暑ィと普段隠されてる素肌の1つや2つ見てえっつの」
「花村先輩キモいっすわ」
「完二うるせえ」


 氷が溶け始めて、カップの中のジュースと混ざる。「くそ暑ィ」と額から汗を止めどなく流す花村と裏腹に、涼しい顔の鳴上が静かに相槌を打つ。近くの木に止まったセミが耳をつんざくような声で鳴く。


「…林間学校の時に女子三人の水着姿を拝ませて貰ったわけだけどよ、なんつーか、こう、悪いけど里中と天城にはインパクト?…ボリューム?が無かったよな」
「なんスか…ボリュームって」
「…二人共十分可愛かったと思う」
「違えよ!可愛いとかそんなんじゃなくて、」
「ああ、胸の話か」
「むッ?!」


 しれっとした顔で返した鳴上と対照的に、呆れ顔でジュースを飲んでいた完二がオレンジ色の液体を勢い良く吹き出す。向かいに座っていた花村が「きたねッ」と椅子ごと引いてそれを避けた。机に滴るオレンジジュースを見て、完二は「すんません…」と謝る。


「反応が大げさすぎんだよ…、童貞こじらせすぎだっつの」
「…うるせえ」
「まあ、確かに胸が一番大きいのは…」
「アキな!いや、普段ゆとりのある服着てっから、身体のラインって分からねえもんなんだよなあー…。こう、いざ見てみたら出てるとこ出てて、締まってる所締まってるのな!そりゃりせに比べりゃスタイルは劣るけど、胸の大きさだけならアキが一番なんじゃねえのか」
「…やっぱ花村先輩キモいっすわ」


 先程とは変わって、引いたような表情をする完二。零したオレンジジュースをペーパータオルで拭きつつ、目線で鳴上に同意を求めた。手元にある大量の濡れたペーパータオルをまとめつつ、期待をする。


「確かに、俺も凄いと思った」
「…マジかよ」
「だろ!?…でも、やっぱり大きくても、触り心地とか重要だよな。ああ見えて固かったら幻滅みたいな」
「先輩が触れる日なんて来ないだろうから安心していいっすよ」
「いや、でもアキのは柔らかかった。手に余る感じが丁度良かったと思う」
「あー、マジかーなるほどねー…。
…ってハァ!?お前、何、も、揉んだことあんのかよ!?」
「ああ」
「えっ、アキと悠ってそういう関係だったのかよ!?」
「あっ」
「あっじゃねえよ!何うっかり屋さん気取ってんだよ!絶対今のわざとだろ!?
マジかよ…、マジかよ…」
「新藤先輩と鳴上先輩って付き合ってるんすか…?」


 完二がストレートに鳴上に聞くと、鳴上は何も言わず、完二に向けて意味深な笑顔と手を"Good"の形にして突き出した。


「YES、ってことかよおおおお…!あー、なんかもう俺ショックで立ち直れねえかも…。つか、よく俺らにバレないで過ごせたもんだな…。」

「…花村何やってんの」
「うおおおおあああ!?」


 テーブルに突っ伏した花村の肩を叩く人影が一つ。完二も心内で「噂をすれば…」と呟いた。心なしか、鳴上が嬉しそうなのを完二は感じ取った。…そういえば、いつも新藤先輩が来た時にはこんな表情をしてたな、と今更ながらに気づく完二であった。


「来られないんじゃなかったのか」
「いや、意外に早く用事が終わったから」
「ああもう!何なんだよ!くっそ、もうお前らなんて二人まとめてどっか行っちまえよ…」 
「はあ?何、花村どうしたの」
「新藤先輩、なんでもねえっす。ちょっと花村先輩、童貞こじらせてるだけなんで」
「…はあ、よく分かんないけど、それでいいわ」


 雲に隠されていた陽が、また顔を出し始める。太陽が四人を照りつける。相変わらずセミの鳴く声が五月蝿い。